ひとことで言うと:酸化グラフェンは、グラフェンのシートに酸素を含む部分(官能基)がたくさん付いたものです。水に分散させやすく量産しやすい一方、電気はほとんど通しません。酸素を取り除いた「還元型酸化グラフェン(rGO)」は電気を通すようになりますが、グラフェン本来の性質には戻りきりません。
1. 酸化グラフェンとは
酸化グラフェン(Graphene Oxide、GO)は、炭素原子が六角形に並んだグラフェンのシートに、酸素を含む「官能基」が数多く付いた材料です。シートの面には水酸基(–OH)やエポキシ基(–O–)が、シートの端にはカルボキシ基(–COOH)などが付いています。
これらの官能基は水と仲がよいため、酸化グラフェンは水の中で一枚一枚にばらけやすく、液体として扱いやすい材料です。反対に、官能基がグラフェンの網目を乱すため、電気を通す性質はほとんど失われます。
国際標準化機構(ISO)の用語規格(ISO/TS 80004-13)でも、酸化グラフェンはグラフェンとは区別された「化学的に修飾されたグラフェン」の一種として定義されています。グラフェンそのものについてはグラフェンとはで説明しています。
2. グラフェンとの違い(比較表)
| グラフェン | 酸化グラフェン(GO) | 還元型酸化グラフェン(rGO) | |
|---|---|---|---|
| つくり | 炭素だけのシート | シートに酸素を含む官能基が多く付いている | GO から酸素をある程度取り除いたもの |
| 酸素の量 | ほぼなし | 多い(炭素と酸素の原子の数の比はおよそ2〜3対1が目安) | GO より少ないが、ゼロにはならない |
| 電気 | よく通す | ほとんど通さない(絶縁体に近い) | 通すが、グラフェンより劣る |
| 水へのなじみ | なじみにくい | なじみやすく、水に分散させやすい | なじみにくくなる |
| 見た目 | 粉は黒〜灰色 | 分散液は茶色 | 黒 |
| 網目の欠陥 | 少ない | 多い | 残る |
| 主な用途 | 電子部品・放熱・繊維・複合材料 | 膜・コーティング・研究用の原料・rGO の原料 | 電池材料・導電性の塗料など |
※ 値や性質は、作り方や酸化・還元の程度によって大きく変わります。
3. 酸化グラフェンの作り方
酸化グラフェンは、黒鉛(グラファイト)を強い酸と酸化剤で処理して作ります。代表的なのが、1958年に報告されたハマーズ法(Hummers法)です。濃硫酸の中で過マンガン酸カリウムなどを使って黒鉛を酸化すると、層と層の間に酸素を含む官能基が入り込み、層の間が広がります。これを水の中で超音波などにかけると、一枚ずつはがれて酸化グラフェンになります。
黒鉛を酸化する研究は19世紀(ブロディ法、シュタウデンマイヤー法)からあり、ハマーズ法はそれを改良したものです。現在も、ハマーズ法をさらに改良した方法が広く使われています。
この方法は大量に作りやすい一方、強い酸や酸化剤を使うため、洗浄の手間がかかり、薬品の残りや網目の欠陥が生じやすいという面があります。当社のグラフェンは、強い酸を使わない純物理法で作っています。製法の違いはグラフェンの作り方で比べています。
4. 還元型酸化グラフェン(rGO)とは
還元型酸化グラフェン(reduced Graphene Oxide、rGO)は、酸化グラフェンから酸素を含む官能基を取り除いた(還元した)材料です。還元には、薬品を使う方法(アスコルビン酸=ビタミンCやヒドラジンなど)、加熱する方法、電気を使う方法などがあります。
還元すると電気を通すようになり、色も茶色から黒に変わります。ただし、一度乱れた網目は完全には元に戻らず、酸素もゼロにはなりません。そのため rGO は、「グラフェンに近いが、同じではない材料」です。量産しやすいことから、電池の導電材や導電性の塗料などで使われています。
5. 酸化グラフェンの用途
| 分野 | 使われ方 | 生かしている性質 |
|---|---|---|
| 分離膜・水処理 | シートを積み重ねた膜で、水と塩やほかの物質を分ける研究 | 水になじむ・シートの間のすき間 |
| コーティング・バリア | 表面に薄い膜を作り、ガスや水分を通しにくくする | 膜を作りやすい |
| 複合材料 | 樹脂や水系の材料に混ぜ、強さを高める | 水に分散しやすい |
| rGO の原料 | 還元して導電性の材料にする | 量産しやすい |
| 研究・バイオ | センサーや薬を運ぶしくみなどの研究 | 官能基に別の分子を付けやすい |
グラフェン全体の用途はグラフェンの用途にまとめています。
6. 製品の材料を見分けるポイント
製品やカタログに「グラフェン配合」と書かれていても、実際には酸化グラフェンや還元型酸化グラフェンが使われていることがあります。素材を選ぶときは、次の点を確かめると違いが分かります。
- 材料の名前:グラフェン・酸化グラフェン・還元型酸化グラフェン・グラフェンナノプレートレットのどれか。
- 作り方:酸化を経る方法か、物理的にはがす方法か、CVD か。
- 酸素の量:X線光電子分光(XPS)などで測った炭素と酸素の比。
- 網目の欠陥:ラマン分光で測った D バンドと G バンドの強さの比(欠陥が多いほど D バンドが強くなる)。
- 層の数と大きさ:何層が重なっているか、シートの横幅はどれくらいか。
当社は、酸化を経ない純物理法でグラフェンを作っています。素材の選び方についてのご相談はお問い合わせください。
7. よくある質問
- 酸化グラフェンとグラフェンの違いは何ですか?
- 酸化グラフェンは、グラフェンのシートに酸素を含む官能基がたくさん付いたものです。水に分散させやすく量産しやすい一方、電気はほとんど通しません。グラフェンは炭素だけのシートで、電気と熱をよく通します。
- 還元型酸化グラフェン(rGO)とグラフェンは同じものですか?
- 同じではありません。rGO は酸化グラフェンから酸素をある程度取り除いたもので、電気を通すようになりますが、網目の欠陥や酸素が残るため、グラフェン本来の性質には戻りきりません。
- 酸化グラフェンはどうやって作るのですか?
- 黒鉛を濃硫酸と過マンガン酸カリウムなどで酸化し、層の間を広げてから水の中で一枚ずつはがします。代表的な方法は1958年に報告されたハマーズ法と、その改良法です。
- 酸化グラフェンは電気を通しますか?
- ほとんど通しません。酸素を含む官能基がグラフェンの網目を乱すためです。還元して rGO にすると、電気を通すようになります。
- 酸化グラフェンは何色ですか?
- 水に分散させた液は茶色です。還元して rGO にすると黒くなります。
- 酸化グラフェンは何に使われていますか?
- 水処理などの分離膜、ガスや水分を通しにくいコーティング、樹脂などとの複合材料、還元型酸化グラフェンの原料、センサーなどの研究に使われています。
- 「グラフェン配合」の製品に、酸化グラフェンが使われていることはありますか?
- あります。材料の名前、作り方、酸素の量、網目の欠陥の量を確かめると、どの材料かが分かります。